グロタンディーク氏が不憫でならない

皆さんはグロタンディーク素数をご存知だろうか。

それは昔、数学者のアレクサンドル・グロタンディーク氏が素数に関する一般論について講演していたときの話。あまりにも抽象的で難しい内容に生徒は困惑し、「具体的な素数を挙げて説明してください」と要望した。それに対してグロタンディーク氏は「じゃあ57を例に説明しよう」と言ったのだが、57は素数ではなかった(19×3)。それ以来、57はグロタンディーク素数と呼ばれるようになったのである。チャンチャン♪

これを知って「へー」と思って色々ネットで調べたところ、これを一番イジってるのは日本人かもしれないということに気がついた。英語版の本人のwikiにグロタンディーク素数の記述は無いのに、日本語版には「逸話」として記述されているのだ。イジり方が鬼畜である。他にも、Twitterでは台風19号が来たときに窓に57というように養生テープを貼るというネタがバズっていた。グロタンディーク、涙目。

さらに、「素数時計」なんてものが市販され、それには「57」という非素数が赤字で表示されている。

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このイジリ方、鬼の所業である。わざわざ赤で表示して分かりやすくしている。普通なら訴えられていいものだが、グロタンディーク氏は2014年に他界している。死人に口なし。無念。

このように日本人はグロタンディーク氏をイジりまくっている。そして、イジってる人の大半はグロタンディーク氏がどんな功績を挙げたのかをよく知らない。「57を素数と言った人」という認識のみを持ってイジっている。なんとも雑なイジりだ。今野、そのイジりに「愛」はあるんか?

 

そして、私がこの記事で一番強調しておきたいのは、

「グロタンディーク氏が講演で57が素数と言ったかどうかは定かでない」ということだ。

色々調べていくうちに、外国では「グロタンディーク素数の話はデマである」という意見が主流になっていることが判明した。理由として、「その出典が見当たらない」「何の講演かが不明」「実際にその講演を受けた人が見つからない」というものが挙げられている。

どうやら我々は、「よく知らない外国人」「言ってないこと」「死んでから」「執拗にイジり倒していた」ようだ。厚切りジェイソンも絶句するレベルの「why japanese people!?」である。

 

このまま57ネタが投下され続けるようでは、グロタンディークが不憫でならない。グロタンディーク素数のネタをツイートしたくなったときは、「ツイート」ボタンを押す前によく考えてほしい。

「このツイート、グロタンディークが見たらどう思うかな?」

グロタンディークに優しい世界を。